古代口ーマコンクリートの調査と分析--その1 古代コンクリートの文献調査とソンマ遺跡の現地調査

摘要

イタリア中南部にあるナポリ近郊のべスビオ火山（Vesuvio）北側山麓に位置するソンマ·ヴュスヴイアーナ遺跡で大型の構造物が発掘されている。いつ頃、誰が何のために建設した構造物であるかは、青柳正規博士（現国立西洋美術館館長）を中心とした「東京大学ソンマ·ヴュスヴイアーナ、ローマ時代遺跡調査プロジェクト」において現在も精力的に発掘調査が行われている。遺跡からは、約2000年程度経過したコンクリート系材料も発掘されているが、このような古代ローマコングノートの研究は、考古学的な見地からばかりでなく、近年、議論されているコンクリート構造物の超長期耐久性を考える上でも工学的に意義のあることである。現在検討されている余裕深度処分や、あるいはTRU廃棄物（長半減期低発熱放射性廃棄物）や高レベルの放射性廃棄物の地下埋設においては、コンクリートに人工バリアとしての機能に対する期待が高い。しかし、人工バリアとしては、放射性のレベルにより異なるが千年から数十万年の耐久性が要求される。また、これらの埋設施設は、地下構造物であり、人工バリアとしての機能を期待しないとしても、施設の維持という観点からもコンクリートには超長期耐久性が要求される。人工バリアとしてコンクリートとの併用が検討されているベントナイトなどについては、天然に存在する地層などで類似したものの変質などを調査して、各種の数値シミュレーションなどにより、予測した劣化の妥当性を評価しようとしている。しかし、コンクリート構造物で、100年程度経過したものの調査が主体であり、1000年以上経過したコンクリート材料などの情報は、非常に少ない。