古代ローマコンクリート--ソンマヴェヴイビアーナ遺跡から発掘されたコンクリートの調査と分析

摘要

セメントコンクリートはインフラや住宅用として非常に重要な材料であり広範に利用されている。通常のコンクリート構造物は100年程度の耐用年数が必要であるが，原子力発電所から排出される高レベル放射性廃棄物を処分するための地下埋設施設では数千年から数十万年の耐久性が要求される。しかし，現代の土木工事や建築で使われているボルトランドセメントの基礎は19世紀に築かれたもので，その歴史はたかだか200年に満たなし。したがって，近代の構造物の変質状況の観察から，長期の耐久性を予測するには限界がある。また，各種の変質促進試験は有用な方法であるが，温度の上昇や物質移動の促進などを伴うため，自然条件とは異なることは覚悟しかナればならない。それならば，温故知新，古代のセメントコンクリートの解析を進めれば，現在のものとの異同はもちろん，長期間経過後の物性の変化についての情報も得られると考えられる。