世界一の商業経営の伝統

摘要

18世紀に世界的にみても傑出した日本の商業経営、そして明治時代の再生はこのようにめざましいものであった。 だが、そればかりではない。 日本の近代的な諸工業は、明治日本の近代化の所産であるが、商業経営の伝統をも内包し、長所として進化に役立たせていたことも見のがせない。 いまや世界の自動車工業のリーダーとなっだトヨタ自動車は、アメリカの自動車工業の技術·製造から販売のすべてを学んで発達してきたのであるが、アメリカと違った経営手法や経常理念もまた著しい。 有名なカンバン方式は、創業者豊田喜一郎のジャスト·インタイム、すなわち「始末」（在庫なし）の経営の帰結であるし、あらゆるユーザーのニーズに応ずる製品開発は、顧客先への奉仕の理念にもとづいている。 事実、豊田佐吉（喜一郎の父）の世界的発明、豊田織機は、あらゆる利用者の「使い勝手」にそくすることが、その生命であった。これからの産業社会は、量産·低コストばかりでなく、同時に製品やサービスの質や特徴がより問われることであろう。 そこには日本の商業経営の伝統について（ここでは省略した教育訓練を含め）、学ぶべきところが多いのである。