ついに実現した海底熱水鉱床のボーリング調査

摘要

今回の掘削調査では，これまで知りたいと思っていた熱水地帯の深部の産状を少なからず知ることができ，これによって島弧の海底熱水活動に伴う潜在資源量を把握するうえで貴重な成果を手に入れることができた．また，深部における硫化物の分布から．その地点における硫化物マウンドの形成が少なくとも2回あり，しかも周辺部が熱水変質を受けていたことなどを把握できたことは，鉱床生成モデルを考える上で重要なデータであった．調査航海では，マルチビーム音響測深器により作成した海底地形図から，硫化物鉱化作用の存在が推定される新たな海底カルデラを発見した．今回はボーリングによる調査が主な目的であったが，水曜西凹地やべヨネーズ海丘などにおける採泥調査によって，ボーリングでは採取が困難な表層の柔らかい堆積物中に熱水活動に伴う硫化物を発見した．伊豆·小笠原弧における熱水活動の候補地がさらに増えたことなど，有意義な成果をあげることができた．今後は，採取試料の分析結果と併せて，同島弧の地形や構造の特徴かう，さらに熱水活動の可能性のある有望な地域を選定し，BMSで確認していくことが課題である．しかし，海洋調査は自然任せなところが多く，実施時期を間遠うと無惨な結果だけが残ってしまうのが頭の痛いところである日本周辺の排他的経済水域内における金·銀等を含む金属資源の潜在量を把握する調査は，ようやく始まったばかりである．2001年の調査が行われたのは11月であった．サンライズ鉱床におけるBMS作業は，幸運にも強風とうねりの合間をぬって2度ほどできたが，十分事前調査をして掘削位置を選定したにもかかわらず，目標点にたどり着くことができず，BMS本体を水深1，300mの深海に4時間以上も引き回してしまった．サンライズ鉱床の地形はあまりにも複雑で，しかも掘削点を探し回っているうちに表層の堆積物をまきあげてしまい，その粒子がBMSの稼働部に入り込んで作業が中断されてしまうということも起こった．波，風，潮，そして禎雑な海底地形という自然がなかなかサンライズに近づけさせてくれない。 すくなとも我々の接を拒む要素をできるだけ事前に取り除かなけれならないと思う．ボーリング調査をしていて思うことであるが,洋における調査はマニュアル通りには決していないものである。 調査に携わる人，一人一人がっている知識·経験，そしてチームワークが大切あることをあらためて実感した。 これをいかに伝ていくことができるかが，今後の調査の鍵でもある。