筑波山周辺の石材加工の歴史

摘要

生活している環境の周囲を見渡せば，砕石の道，大谷石の塀，御影石の墓塔など様々な石が身近に使用されていることが改めて分かります．しかし，それと同様にコンクリートやアスファルトなど石に変わる硬質な人工的に手が加えられた物質も存在しており，石材が自然界の中にある材料であることを忘れがちにさせています．石材は，地域ごとの地質状況の変化で多種にわたり，それらの特性や見た目などによって利用される目的を変え，人類の道具や信仰遺物の素材，そして建築資材など時代ごとに花開く文化に彩りを添えてきました．筑波山系の山並みから産する花崗岩も，同様に人類との関わりをもって歴史を刻んできました．これら自然と人類が共生するシステムを学び，先人の知恵と技術を学ぶことは，自らの人間性を育ませることと共に郷土への誇りを持たせるきっかけとして有効であるといえます．今回は，石材という観点からアプローチを試みた次第です．更にはこのような，地域の自然と人類の関わりの歴史を学ぶ機会は，環境問題が問われる現代社会に非常に重要なものと考えます．高度経済成長期以降の大量生産，そしてそれに伴う大量消費こそが経済発展の要素と捉えられる社会が，それまで共生してきた自然界と人間界の要素を乖離させてきました．人工製品が氾濫する社会は，自然と密着した生活から発生する自然への畏敬の念や共生するという精神を失わせているのです．今，先人たちの自然利用を学び，そこから今後に活かせる共生システムの理論を抽出すべきと考えます．その立役者に今回の生徒が一人でも，またはそういった考えを伝承する人物に成長することを願いたいと思います．