新潟県中越地震

摘要

地震も山崩れも風雪も，自然災害の要素であると同時に，生きている地球の生理現象の一つである。 それらを理解することは，防災·滅災のための技術的基盤としてのみならず，地球の営みを解明する上で不可欠と言える。こうした自然災害科学の視点を背景に，これらの自然現象が人々に厄災のみならず恵みを与えてきたことが明らかにされている。 すぐれた医者は病気だけでなく人そのものに対する深い理解をもつと言うが，同じことは自然災害研究についてもあてはまるのであろう。さて，本書は新潟大学災害復興科学センターの研究者とその同僚たちによって書かれた，2004年新潟県中越地震とそれに引き続く豪雪災害について解説した一般向け普及書である。この本が他の災害解説書と異なる点は，災害の実態と要因や，災害の素因である地学的特徴だけでなく，過去に繰り返された地震や地すべりが豊かな環境の形成に深くかかわっていること，そして今回打撃を受けた中山同地域が魅力と将来性をもつ地域であること，を解説している点である。