特集/精神疾患に対する薬物治她の現状と今後の展開

摘要

精神疾患に対する治療手段の中で薬物治療の占める比重は非常に大きい.1990年代の後半以降，選択的セロトニン再取り込み阻害薬や非定型抗精神病薬 などのそれまでの向精神薬とは異なる薬理作用をもつ新規向精神薬が矢継ぎ早 にわが国の臨床現場にも導入された.そういう意味では精神科の薬物治療はこ の15年ほどの間に大きく変貌したと言える.新規抗うつ薬はうつ病などの気 分障害のみならず，不安障害の治療手段として，新規抗精神病薬は統合失調症 などの精神病性障害のみならず，双極性障害.うつ病などの気分障害への治療 適応が認められるようになってきている.これらの向精神薬の多くはそれまで の向精神薬の不快な副作用を軽減することが大きな開発目的のひとつであつた 力5，もちろん，新規向精神薬とて万能ではなく，新たな問題も起こってきてお り，それらを克服するような薬物の開発が継続されている.