麻酔科学史の新研究（11）ウイリアム·T．G．モートンのエーテル麻酔を見た幕末の日本人医師たち

摘要

徳川幕府は，日米修好通商条約批准のため，1860年（万延元）1月，外国奉行新見正興を正使とする77名の使節団を米国へ派遣した。5月22日にワシントンで批准書は交換された。 山行はボルチモア，フィラデルフィアを経由し，ニューヨークから出航し帰国の途に着いた。フィラデルフィアで随員中の村元伯元ら3名の日本人医師はトーマス·ジェファーソン大学病院を訪れ，外科サミュエル·グロス教授の膀胱結石の手術を見学した。 エーテル麻酔の担当者は，1846年10月16日にマサチューセッツ総合病院でエーテル麻酔の公開実験に成功したウイリアム·T．G．モートンその人であった。 彼らはエーテル麻酔の情報を持ち帰ったと考えられるが，その痕跡をたどることは困難である。