熱帯の酸性硫酸塩土壌に適応する樹種の選抜とその生理特性

摘要

酸性硫酸塩土壌は，パイライト（黄鉄鉱，FeS2）を多く含む土壌で，酸化状態に置かれると，硫酸を生成し強酸性の問題土壌になる。酸性硫酸塩土壌は，いわゆる強酸性土壌の中でも特に酸性が強く，pH3以下を示すことも珍しくない。酸性硫酸塩土壌では，低pHそのものの書（水素イオン過剰書）に加えて，アルミニウムやマンガンの過剰書，リン酸欠乏などが植物の生育を阻害する。そのため，酸性硫酸塩土壌では，これらの阻害要因に適応能を持った限られた植物しか生育できず，生物生産性の低い草地や裸地といった荒廃地になっているところも多い（写真1）。このような酸性硫酸塩土壌は，主として熱帯、亜熱帯の低湿地に分布し，パイライトが酸化していない潜在的なものも含めると，世界に1，200～1，400万ha存在する。さらに，表面を他の土壌に覆われているものは，その約2倍存在すると推定されている。現在，地球上の肥沃な土地は既にほとんどが農耕地として使われており，農耕地として適さない酸性硫酸塩土壌などの問題土壌を農業開発した結果，失敗して荒廃地として放棄されることが非常に多い。今後，酸性硫酸塩土壌をどのように利用するかという問題はますます重要になっていくと考えられる。