強磁性薄膜パターンに閉じ込められた磁気渦対の共振スペクトルを用いたスピンダンピング機構の解析

摘要

一方、Gilbertダンピング項（（1）式右辺第2項と（2）式右辺第3項の合計）とβ項（（2）式右辺第2項）は、スピン系の散逸過程を微視的に理解する観点から研究が進められてきた。さらに、αとβの大きさの比を制御することによりスピン波の増幅や省電力·高速な磁壁移動を実現できることが数値計算により示唆されて以来、両者の大きさを測定する研究が盛んに行われている。Gilbertダンピング項の大きさを決めるαは、強磁性共鳴スペクトルの線幅や、磁化緩和の実時間測定により調べることができる一方、βについては測定方法やその対象によって大きく異なる値が報告されている。これは、β項が磁化の空間微分を含む形で与えられるため、試料形状の不完全性やSTTによる磁気構造の変化によりその大きさが変化してしまうことが一つの要因と考えられている。これらの影響が小さい系として着目されているのが円盤型薄膜に閉じ込めた磁気渦の共振運動である。本講演では、楕円型強磁性薄膜内に閉じ込めた磁気渦対の共振運動に対する解析計算の結果と、β項の測定方法について説明する。