CPS（サイバーフィジカルシステム）とその鉄道への応用

摘要

CPS（Cyber Phisical System；サイバーフィジカルシステム）とは，実世界と情報空間の相互の作用を明示的に考察し，システムの設計に反映することで，社会システムの安全性や機械の制御の性能を高める技術的考え方を示すバズワードである．本記事は2013年6月20日に開かれた次世代EMC研究会総合フォーラム「サイバーフィジカルシステム（CPS）とEMC～スマート化を実現するCPS～」での，必ずしも鉄道技術には詳しくない電磁環境の専門家に向けて行った「鉄道システムにおけるCPSとEMC」の講演内容をまとめたものである．まずは，安全な列車運行のために電気通信による信号保安が不可欠であったという鉄道技術の黎明期からの，情報と鉄道技術の密接な関係を瞥見し，現存の鉄道システムがCPSとしての重要な要素を内包していることを説明している．そして，これまで様々な技術的成果をあげてきた日本鉄道サイバネティクス協議会の活動や，鉄道総研が2000年前後に提唱したサイバーレール構想が，情報と深く関わる日本の鉄道システムの技術開発に，図らずも欧米におけるCPSの議論を先取りする形での方向性を与えてきたことを考察している．そして，これらの思考を通じ，CPSというひとつのフレームから今後の鉄道技術の長期的な発展の方向を，希望を持ってながめてみることを提案している．