プラスチック成形加工技術者のための光学講座：第3章 用途,アプリケーション3.5レンズ材料

摘要

従来はガラスレンズが使用されてきた各種撮像系分野でプラスチックレンズへの代替が進んでいる．スマートフォンやタブレット分野では既に大半のレンズがプラスチック化され，今後も新興国を中心に市場拡大が進むとともに，日本を始めとする先進国では更なる高性能化の要求が強い．具体的には，高画素化,高精度化，小型化に加えて，低コスト化の要望を受けて，高屈折率，低複屈折率，透明性，加工性等に代表される高流動性などの要求が一層強まっている．一方，急速に市場が広がりつつある，自動運転に向けた車載カメラや，自然災害や物流監視のニーズの高まりに伴う監視カメラ用途では，スマートフォンやタブレット分野よりも長期間の使用が想定され，かつ安全にかかわることから，より高い耐久性と信頼性が必要とされており，まだまだガラスレンズが使用されている．しかしながら，プラスチックレンズの高耐熱化に加えて，加工性に優れることから，徐々にではあるが，プラスチック化が進みつつある．本稿では，主に熱可塑性プラスチックの射出成形により得られる撮像系のレンズ材料に求められる物性と代表的な構造について紹介する．