都市緑化の評価に基づいた緑化便益の増進手法に関する研究

摘要

この度.栄えある日本緑化工学会賞（論文賞）を受賞し， 身に余る光栄と存じます。口本緑化工学会の皆様及びこれま でご指導を賜りました方々に篤く御礼申し上げます。略歴にもありますように，私は長年にわたって都市公園や 都市緑化などの都市行政の実務に携わってきました。それが今から8年ほど前に研究職として建築研究所に赴任してか らは，これまで携わってきた都市緑化行政の意義を学問の立 場から再確認するという作業を進めるに至りました。都市緑化のうち，研究対象としたのは屋上緑化や壁面緑化 などの建物緑化です。当時は建物緑化がホットな研究テーマ だつたのと，人工地盤上の緑化は規模が明確なので便益と量 の関係が把握しやすかつたためです。ただし，建物緑化は ヒートアイランド現象緩和や都市の景観向上，都市のァメ 二 ティ向上や生物多様性の確保などといった多岐にわたる機能 を有するため，CVM (仮想市場評価法）やAHP (階層分析 法）などの各種の直接選好法（費用便益分析手法の一種）を 用いた評価14'5"18)のほか，温熱環境実験などの各種実 験7 8 919',それに緑化利用者の動態調査6'12'の実施などによつ て機能別の便益の把握に努めました。こうして得られた結果 のうち.一定の条件のもとでの試算の代表例を図-1に示し ています。本図のような機能別の便益の定量的比較は，緑化 施策の展開の検討のための基礎資料となりうるものですが，