生物多様性条約と伝統的知識の保護 一知財関連の議論の現状と今後の課題一

摘要

2010年10月18-29日に名古屋で開催された生物 多様性条約（CBD)の第10回締約国会議（COP10) において，「生物の多様性に関する条約の遺伝資源へ のアクセス及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡 平な配分に関する名古屋議定書」（名古屋議定書）が 採択された.名古屋議定書には法的拘束力があり，ま た親条約であるCBDと比べて伝統的知識の保護に関 し一歩進んだ内容を定めていることから，今後の伝統 的知識の保護をめぐる議論及び実務に少なからぬ影響 を与えることになる.一方，CBD関連の議論とは別に，国連の知的財産 に関する専門機関である世界知旳所有権機関（WIPO)において，現在，伝統的知識の保護に関する国際文書 の作成が進められており，その議論の行方はCBDに おける伝統的知識の保護の問題にも大きく関連する. そこで，本報告では，CBD及び名古屋議定書におけ る伝統的知識の保護に関する要点を整理した上で， WIPOにおける議論の状況を概説し，伝統的知識の保 護に係る今後の課題について考察する.