TPP交渉参加表明後の酪農をどう考える

摘要

安倍晋三首相は3月15日夕、ついにTPP交渉への参加を公式 に表明した。後発の交渉参加の不利性や日本の国家的行き詰まり を隠すことなく、未来の成長と繁栄の新たな足掛かりを、この交 渉から獲得するために、農業経済をはじめとした国内経済の損失 をも上回るもうけを獲得しようと、勇ましく交渉の場に乗り込む み、文字通り賭けに打って出ようという覚悟と気概が伝わる演説 だった。まさに賽（さしゝ）は投げられた。しかし、酪農をはじめと した農業界さらには幅広い国民に、不安と疑問を残したまま参加 表明に至った現実は残る。国内のさまざまな「交渉参加問題」の議 論を通じて浮上した数々の懸念は全て杞憂（きゅう）とはならないここではTPP参加を外交問題ではなく、国内経済全体の問題で もなく、酪農の現場の問題、「参加表明」によって生じる酪農の影 響と今後の情勢変化に関して考える。だがこの話に「結論Jはない。 今回の参加表明に衝撃を受けた酪農界の皆さんに申し上げるべき ことは、交渉参加表明がなされたからといって、何かが急に激し く変わるわけではないということだ。だが、しばらく時を置いて 周囲を見渡せば風景の一変がある。恐らく、そういう静かで、し かし大きな変化がこれから到来する、という話になろう。新たな 環境の下、これからの日本酪農をどう再構築していくべきか、今 後のさまざまな論考の一助になればと思う次第だ。