子牛の経口非ステロイド性抗炎症薬の薬物動態学的研究

摘要

非ステロイド系抗炎症剤（NSAIDs)はステロ ィド系抗炎症剤に比べ有害反応が少なく利便性が 高い.特にヒトおよび伴侶動物医療において抗炎 症，疼痛管理の観点，また重篤な有害反応が少な いことからNSAIDsの適用範囲は拡大している. しかし，牛医療においては家畜保険給付の制限な らびに有害反応である胃粘膜障害も懸念されてい るため，継続投与が必要であつてもその適用が制 限されている.そのため，人体用の経口錠剤，例 えば安価なジクロフュナク製剤などの長期投与が 望まれる.その一方でNSAIDsは牛への長期投与 による胃腸障害に関する情報は極めて少ない.ま た，経口投与型錠剤はその表面に特殊なコーティ ングを施すことで，ある特定のpH領域または時 間で薬剤が徐放できるよう設計されている.たと えば，牛医療での応用が望まれるジクロフヱナク 製剤も胃の低pH領域（pHl-2)では溶出せず， 小腸の中性領域にて溶出，吸収されるよう設計さ れている.しかし，牛のような複胃動物に関して そのような溶出挙動を示すかは明らかではない. 従って，本研究ではStudy1として,抗炎症治療 のため長期間NSAIDsを投与された子牛につい て，消化器系の臨床所見ならびに第四胃の病理学 的検査を実施し，NSAIDsの安全性について評価 するとともに，Study 2としてノ《リゥム含有錠剤 を子牛に経口投与し，腹部単純X線レントゲン撮 影を用いて，経口型製剤の消化管内挙動をシミュ時30.6±36.1日齢）であり，それぞれ呼吸器疾患 (5頭），骨折（1頭）および多発性関節炎（1 頭）であった.すべての症例は始めに1-6日間 のフルニキシンメグルミンの静脈内投与（2-4 mg/kg, iv)を行レ、，その後ジク口フエナク（25mg/ 錠）を採食確認後に経口投与した.NSAIDsの総 投与期間は13-32日であり，投与期間中は身体 一般検査に加えて翼便状態および消化器症状の有 無を確認した.剖検による第四胃の評価は漿膜面 での炎症性変化，第四胃粘膜上の潰瘍および出血 痕の有無を確認した.