虐待を疑いながら虐待死を防ぎえなかった一例を通して

摘要

虐待を疑い通報したにもかかわらず認定されず，結果的に死亡という転帰をたどった症例を経験したため報告する.症例は4歳男児で3人兄弟の長男.実母と内縁の夫と5人暮らし.実 母と実父は離婚.右大腿骨骨幹部骨折のため救急搬送後に入院.受診時の母親と本人の様子，全身 の不自然なァザなどより虐待を疑い，児童相談所を通じ警察に2度にわたり通報.しかし警察によ り虐待ではないと判断されたため通常の外傷として加療.退院後も外来通院はなく ，退院2か月後 に自宅火災にて焼死.出火当時母親は患児を含む乳幼児3人を自宅に残し数時間にわたりパチンコ に行っており不在であった.この症例を通じて，虐待を疑う症例では児童相談所および警察に否定 されても注意して経過を追い，場合によっては再度通報する必要がある.また，整形外科だけでは 対応困難な場合，積極的に小児科に介入してもらうことが必要である.