射線研究に関する雑談，あるいは略して放談-第7回：自由電子は光子の完全な吸収も放出もできない-

摘要

ただ1個の電子が孤立しているとき，すなわち周囲から全く力を受けていないとき，自由電子と呼ぶことにしよう．自由電子に電磁波が当たると何が起こるだろうか．自由電子と1個の光子との相互作用の結果　 電子と光子の問でエネルギーのやりとりが起こる．これがコンプトン効果である．光子のエネルギーが完全に電子に移ってしまうこと，すなわち，自由電子による光の完全な吸収は起こりえない．言い換えれば，光子が電子によって吸収されるときには，その電子はもともと自由ではありえない．さらに，言い換えれば，光子が電子（あるいは静止質量がゼロではない荷電粒子）によって完全に吸収されたとすれば，その電子は自由ではなかった，すなわち，原子核や他の電子などを含む体系の一部であったに違いない．