産地マーケテイング論の新展開一関係性の視点から-

摘要

本論では，これまでの産地マーケテイング論をレビューし，その課題を摘出するとともに，関係性マーケテイング論の研究動向を整理し，その意義と産地マーケテイング論への適用可能性を検討した．　 既存の産地マーケテイング諭を鳥腋すると，農協共販の分析に傾斜しており，販売先も卸売市場を想定したものが多い．しかし近年の流通環境の変化や産地自体に内在する開場の変化に対し共販研究では問題点を指摘するものの，具体的な対応策を提示していない．また，マネジリアル·マーケテイング論を授用した研究は，論点整理に寄与したが，自生的に有用な知見を提供しているわけではない．産消提携論は，産地と消費者との継続的関係構築の重要性を指摘したが，近年に入り流通論と運動論が分離傾向にあり，両者の有機的結合関係を見いだせずにいる．フードシステム論は，主体開閉係の視点から新たな知見を提供しつつあるが，体系化には至っていない．一方，一般マーケテイングの分野では，マネジリアル·マーケテイング諭の限界を克服するためのパラダイムとして，関係性マーケテイング諭が提唱されている?関係性マーケテイング論は，長期的関係形成への視座，相互作用への着軋社会的要因への配慮等の埋論的特徴を有しており，産地マーケテイング諭を発展させる上で有用な視点や分析枠組を提供している．具体的には，取引ネットワーク構造の把握，取引に関わるサービスの分析，消費者との関係分析，関係の維持を媒介する社会的要因の考察に適用可能と判断される．最後に，産地が直面しているいくつかの場面を対象に予備的考察を行い，具体的にどのような関係性分析が可能であるかを明らかにした．