放射線影響研究所成人健康調査における原爆被曝の健康影響調査に関して

摘要

1945年、広島と長崎に原子爆弾（広島：ウラニウム爆弾、長崎：プルトニウム爆弾）が投下された。 そのエネルギーは爆風、熱線、放射線からなり、その年の12月までに外傷、火傷、急性放射線症状を呈して両市の人口の約3分の1が死亡したと推定されている（1）。 放射線の局部照射や職業被曝に伴う障害については20世紀初めから轍告されていたが、全身への1回照射で放射線に被曝した場合の影響については原爆被爆以前には検討されていなかった。 放射線影響研究所（放影研）およびその前身である原爆傷害調査委貞会は寿命調査集団と成人健康調査集団等の調査のため集団を設定して追跡することにより、原子爆弾の人体への影響の解明に努めてきた。 調査方法はコホート研究と呼ばれるもので、イ反説にたてられた因子に暴露した者の集団と暴露していない者の集団を設定して両集団を追跡し、疾病等の発生状況を比較する方法である。 コホート研究は暴露群と非暴露群から発生する疾患等の頻度を直接比較できるので因果関係の究明に優れた研究方法であるといわれている（2）。 被爆者とその対照を長期追跡するコホート研究により、寿命調査集団では死亡や悪性膿瘍に関する影響、成人健康調査集団では疾病の有是個病率·発症率や生理的影響について解析されている。 本稿では1958年から継続実施されている成人健康調査の検診で得られた鮪果の概要について略述してみたい。