造成地における未熟土を植栽基盤としたコナラ林の創生一8樹種の苗木の生残?成長と植栽基盤の土壌化学性変化一

摘要

造成地における未熟土を植栽基盤として,コナラを含む落葉広葉樹8樹種（コナラ,クヌギ,イヌシデ,ムクノキ,エノキ,コブシ,ヤマザクラ,エゴノキ）の苗木を約1株／m2の密度で混植し, 15年間にわたって苗木の生残?成長を調査した.15年後の苗木の生残率は樹種によって異なり,エノキとムクノキがそれぞれ84％と72％と高ぐコナラは40％であり,エゴノキはすべての個体が枯死した.15年後に形成された群落の高さは11m前後に達し,高木層,低木層,草本層からなる階層構造を有する森林植生が形成された.植栽種以外では,ヤマグワが侵入?定着し,高木層にも点在した.草本層には31種の植物種が確認され,試験場所の潜在自然植生の構成種であるタブノキ,シロダモなどの常緑樹の実生も確認された.植栽11年後に植栽基盤の土壌化学性分析を行った結果,腐植は植栽前の1. 9倍,全窒素は1. 4倍に増加した.しかし,これらの値を周辺のコナラ二次林の森林土壌と比較すると腐植,全窒素ともに約4分の1程度であった.これらの結果から,未熟土を植栽基盤とした苗木植栽により, 15年間で植生としてはコナラ林が形成されつつある一方,周辺のコナラ林と同等まで土壌が成熟するまでにはさらに時間を要することが示唆された.