1704年羽後·津軽地震に伴って発生した巨大山体崩壊としての十二湖崩れ

摘要

世界自然遺産自神山地最西部，青森県西津軽郡深浦町岩崎（旧岩崎村）の日本海に面する大崩山（海抜940m）西面には，幅2．5km，比高400mに及ぶ馬蹄形をなす崩壊壁（主滑落崖）とその前面に最大幅3km，奥行き2km以上にわたる流山湖沼群（津軽十二湖）が発達している（口絵－1：写真－1）。 この巨大山体崩壊は，その移動域内の湖沼群名に由来して十二湖崩れと呼ばれてきた（古谷ほか，1987）。 十二湖崩れは，1704年（宝永元年）5月27日に発生した羽後?津軽地震にともなって，崩山西側の尾根状の斜面（0．8kmZ）が抜け落ちるように崩壊し（口絵－2：：写真－2），山麓部の丘陵を約3．6km2にわたって覆うことで発達した（今札1935；古谷ほか，1987）。 十二湖崩れの移動土塊量（崩土）は108m3クラスと大きいものの，崩土の移動距離が2kmとやや短いことが本山体崩壊のもう一つの特徴となっている。これは基底地形として開析谷の発達した丘陵が，流入した崩士の移動を規制したからと考えられている（古谷ほか，1987）.