2007年新潟県中越沖地震による初生的岩盤地すべりと層面すべり

摘要

2007年7月16日に発生した新潟県中越沖地震は，柏崎市街地を中心に甚大な被害もたらしたが，災害の多くは平野部やその周辺地域に集中しており，山地における斜面災害は発生数が少なく，その大半が小規模であった。 2004年の中越地震では，地すべりによる多数の斜面災害が広範に発生したことに比べると，際だった違いが見られた。 しかし，筆者が行った斜面崩壊調査では，柏崎市南部米山海岸の聖ケ鼻と同市北部海岸の椎谷鼻では地震動を誘因とした層理面沿いの岩盤変位現象が多く見られた。 聖ケ農地区の流れ盤斜面ではこのような層面すべりが初生的地すべりに発展したものであり，受け盤斜面の地すべり発生にも関与をした可能性が高い。 同様な岩盤変位現象は，2004年の中越地震や2007年3月に発生した能登半島地震の際にも観察され，2003年の宮城県北部地震でも同様な報告がある1）。 これは地震動による層状堆積岩の斜面変動に特石な現象であり，初生地すべりの先駆的現象と考えることができる。 ここでは，こうした観点から2つの地区の事例について報告する。