神経細胞のカノニカル記述の同定と統計力学

摘要

賢明な読者はおわかりだと思うが，ここで詳解した理論はすべて線形である。 細胞の機能たんぱく質のリン酸化により起きる実効的インピーダンスの発散「釣合い特異点」は，膜の等価並列回路の1次摂動展開で求めることができる。 また，神経細胞の位相応答曲線の同定は，位相の線形応答の計測である。 それに，仮想神経回路の統計力学で用いている手法は，N個の細胞からなるシステムから1細胞引き抜いたときの局所場たの変化を求め，自己フィードバック（自己反跳場）を見積もり，平均操作が厳密なるように（問題を1体化）している。 統計力学も1次の摂動展開である。 すべて線形応答なので，実験で計測することが可能なのである。 すなわち，われわれが目指しているのは，脳をミクロからマクロへ直線で繋ぐことである。 ．いわゆる「複雑系」の研究とは，対極の立場である。たとえば，データ点が数個しかない状況で関数をフィッティングしなさいという問題に直面したとき，あなたはどんな関数を用意するだろうか。 パラメータ数が少ない1次関数を用意するはずである。 非線型関数を使えば，オーバーフィソテングが起きる。 実験で得られるデータは少ない。 まずは線形のシステムを当てはめるのが常識である。