知的所有権の21世紀への展望

摘要

20世紀の終わりにきてビジネスモデル特許に大きな注目が集まり始めた。 そのきっかけは,ステート·ストリート·バンク事件における米国連邦巡回控訴裁判所（United States Court of Appeals for the Federal Circuit以下CAFCと記す）の判決である.この判決は，ビジネス方法に特許の付与を認めるものであり，米国企業のみならず，日本企業にも大きなインパクトを与えた.この判決に至る背景には，強いアメリカを蘇らせようとした1980年代後半からの司法と行政の両面に渡るプロパテント政策（特許重視政策）の存在があると思われる.20世紀末のIT（情報技術）の急速な普及に伴い，新しいビジネスがつぎつぎと生まれ，産業構造が急速に変化している.このような変革に伴い知的所有権制度に関するいろいろな課題が顕在化してきた.米国のプロパテント政策は産業構造の変革に対応するものであり，日本においてもプロパテント政策の必要性が論じられ，日本特許庁はプロパテント政策に向けてのいろいろな改革を推進している．