《第9回》非線形ロパス卜制御のたあの消散性理論

摘要

前回のリレー解説では，非線形システムの安定性として，クローズドシステムに対する古典自な安定性に加えて，オープンシステムに対する安定性（たとえば，入力-状態安定性（Input-to-State Stability），略してISS）についても解説し，オープンシステムの特性を議論することの重要性を論じた。 実際には，非線形システムに拘らず，制御系設計において，入出力を通じて外界と作用するオープンシステムの特性を論じることは重要である。 そういった観点から70年代初めにJ．C．Willemsは，入出力を通じた外界との相互作用をエネルギの視点で捉え，消散性（dissipativity）という概念を提案し，その基礎理論を構築した。 消散性とは，入出力を通じて外界から供給されるエネルギがシステム内にすべて蓄積されない性質であり，L{sub}2ゲイン特性や受動性を，さらに非線形システムでは先に紹介したISSをも，その特殊な場合として含む一般的な概念である。現在では，線形システムだけでなく，非線形システムにおいてもその制御系設計において有用な理論となっており，また，ビヘイビアシステムや無限次元システムなどへの拡張もなされてきている。