熱力学データベースの高温材料科学への応用--酸塩基性と原子価安定性との関運で

摘要

ここでは，酸塩基性と原子価安定性を絡めて種々の反応性について考察した．化学の長い歴史の中で培われてきた酸塩基性という尺度を，充実度が増してきた熱力学データベースを用いて検証することは，十分価値のあることであろう．原子価安定性などは他の物理的特性とも容易に関連づけることができるので，究極的な高温化学の目的である，機能性と化学安定性の両方を視野にいれた総合的な考察も十分視野に入ってくる．本稿で作図したものは，熱力学データベースMALT，化学平衡計算ソフトgem，化学ポテンシャル図構築ソフトCHDを用いたものである．同様な化学的観点から構築されているデータベースとしてFACTがある．データベースの充実とともに，化学平衡計算，化学ポテンシャル図構築法の進展は，熱力学の使い方を大きく変えてきている．さらなる進展が望まれるとともに，その利用法についても，さらに深化することが望まれる．