球状黒鉛鋳鉄の基地組織に及ぼすりん，すず量及び熱処理の影響

摘要

球状黒鉛鋳鉄の基地組織に対するりん，すず及び熱履歴の影響を3.65％C－2.5％Si－0.3％－Mn－0.20r0.5％Cu－0.04％Mg材を用いて，鋳放し材と熱処理材について検討した．実験の結果，以下の結果が得られた．（1）球状パーライトはAc_1直下～Ar_1以上の間において，一定時間の保持により得られる．パーライトの層状·球状遷移のメカニズムは，先の普通鋳鉄の報告に類似し，共析変態時のオーステナイト中の固溶炭素量，即ち，熱処理時の保持温度に依存している．その臨界固溶炭素量は約0.56％である．（2）光学顕微鏡で観察された球状セメンタイト（パーライト）は，SEMにより立体的に観察すると，棒状又は珊瑚状セメンタイトである．（3）球状パーライト熱処理時の基地のフェライト化傾向を防ぐために，P単独の添加ではその効果が不十分で，Snなどの強いパーライト促進元素の添加が有効である．（4）二相混合組織材が引張と伸びのバランスに優れていることば知られている．その混合組織は1173Kのオーステナイト均一化した後，Ac_1直上の1073K処理を施すと得られることを明らかにした．