医療·福祉用ロボットの現状と将来展望：オープンMRI用精密手術用機器の研究開発

摘要

オープンMRIとは，従来のMRI（核磁気共鳴断層画像）と原理は同じく，体内の断層画像を撮影する装置であるが，特に患者撮影空間（開口部）が広く改良設計されたものであり，従来の診断のためだけでなく，治療を行うための空間確保がなされていることを特徴とする．MRIは水分子を多く含む臓器の描出性に優れ，また血管系の画像や機能画像の撮影に優れて広く普及している．その一方で，MRIは常に強い磁場環境下で撮影が行われる．そのため，通常撮影時には患者は時計など金属類の持込は不可で，さらに例えば歯科矯正等によりワイヤを埋植している場合頭部の画像が適切に撮像されない，ペースメーカ使用者のMRI撮影は禁忌である等の制限がある．すなわち，MRIを撮影しながら治療を行うためには，磁性への考慮を十分に行う必要があり，非磁性材料の選定とともに，電気ノイズ系の対応など検討すべき課題は多い．既にMRI下治療を支援する各種手術器具や麻酔器，バイタルモニタなどは開発されているが，さらに我々は，術中画像撮影下における新しい手術支援システムとして，MRI画像情報のもつ定量的な位置データを用い，術者を患部へと誘導するMRI-Compatibleの精密手術用機器（マニピュレータ）の開発研究を行っている．