原子空孔を利用したB2型金属間化合物のナノ表面形態の制御とナノテンプレートへの応用

摘要

組織制御が金属材料の特性制御に極めて重要であることは，言うまでもない．しかし，原子空孔をはじめとした点欠陥が積極的に金属材料の組織制御に活用されたことは，これまであまり例を見ない．本稿では，これまでのB2型金属間化合物を対象とした研究成果を紹介した．しかし今後，金属材料全般に目を向け，金属材料中の点欠陥の性質をより詳細に明らかにしていく一方で，点欠陥を利用したナノ組織制御技術を検討していくことは，金属材料の新しい機能を引き出していく上で必要不可欠である．本稿で紹介した原子空孔の自己組織化については,過飽和空孔の導入·凍結技術や，原子空孔の流れの制御によってさらに大きな展開へとつながるはずである．原子空孔は結晶格子中で弾性歪場を発生させているから，外部から与えられる弾性歪場との相互作用によって，流れの制御ができるはずである．そういった現象は，現実に拡散クリープ現象などで見られている．このように，様々な科学分野の経験と知識が集積し融合されることで，新しいナノボーラス金属材札あるいはナノ構造化金属材料の創製が可能であると期待している．