機能性材料における表面処理技術の現状と展望：金属系生体材料における表面処理技術

摘要

金属は，毒性が強く人体内で腐食や疲労破壊を起す，“好ましくない材料”であると考えられてきた．そのため，安全性を向上させることが第一義で，その生体適合性を向上させることはむずかしく，耐食性を向上させ，体内での破壊をなぐすことに努力が注がれてきた．さらに，典型的な人工材料であり生体機能性がないと認識されており，生体材料として魅力のないものとみられることも多い．それにもかかわらず，金属材料は優れた強度と靭性から多くの医療用部材に使用され，体内埋入型部材（インプラント）の70％以上を占めている．一時期は，すべての部材がセラミックやポリマーになるのではないかと考えられたこともあったが，力学的信頼性からその必要性はまったく衰えていない．また，ティッシュ·エンジニアリングを含む再生医療によって人工材料は淘汰されるかのように考えられたが，その実現には相当な時間がかかることも明らかになっており，現実的な問題として，金属材料の重要性が再認識されてきている（図1）．ここでは，金属材料のおかれた立場と現在までに考案されている表面処理について考える．