調質圧延におけるズーミング法を用いた表面租さの転写解析

摘要

平面ひずみ剛塑性有限要素解析コードRIPAD2Dに，新しく開発した座標変換を用いたズーミング法を適用した。 これを用いて調質圧延における粗さ転写解析を行った。 （1）開発した解析手法を表面痕を有する材料の圧延における変形解析に適用し，その解析結果と実験結果を比較して，開発した手法が材料表面の微小領域の変形について十分な解析精度を有することを確認した。 （2）放電ダルロールおよびショットダルロールをモデル化した表面凹凸を有するロールを用いた圧延の解析を行った。 その結果，圧下率が増大すると粗さ転写率が増大し，放電ダルロールをモデル化したものではある圧下率において粗さ転写率がピークとなることが分かった。 圧下率をさらに大きくすると，材料とロールの相対滑りにより一度刻まれた凹凸がロールギャップ内後半においてつぶされるような挙動が見られ，粗さ転写率が減少することが分なった。 （3）ショットダルロールをモデル化したものは放電ダルロールをモデル化したものに比べ粗さ転写率は低く，ロール表面凹凸のプロフィールが粗さ転写率に影響を及ぼす事が分かった。 （4）SPCC材とS65C材とでは，粗さ転写率の違いはばとんどなかった。 これはS65C材で昼荷重が高いことによって粗さ転写率を増大させる効果と，変形抵抗が高いことによってミクロ変形を抑制する効果とが相殺されたためと考えられる。（5）ロール径を小さくした場合，粗さ転写率は小さくなった。 これは荷重が低下したことによる影響と考えられる。 最後に，本論文は日本鉄鋼協会「調質圧延のミクロ変形解析」研究会での成果の一部をまとめたものであることを付記し，謝意を表する。