トマト果実の成熟制御に関わる転写因子

摘要

トマトやモモ，メロン，イチゴ，リンゴ，ブドウ等， 多肉質の果実類には食品として有用なものが多く含まれ る.これらのうち多くのもの力?，果実の肥大生長が終わり 成熟期間を経た後に，食品として利用されることになる. この成熟期に果実は劇的にその性質を変化させる.鮮やか な果皮色、果肉食に変化し，華やかな芳香を放ち，酸味や 渋味が減少して甘味を感じるようになり，また果肉が軟ら かくなる等.食用に適するようになる.ところ力s,この成 熟の変化はある一定程度以上進行すると，過度の軟化.裂 果の後に腐敗する等，過熟による品質の劣化を招く.この ように成熟は，果実の品質に大きく影響を与えるため，そ の制御には食品産業的な重要性がある.また一方で，先に 述べた成熟期の多様な形質の変化は.あるタイミングで同 調的に開始する力?.このことは数多くの代謝経路が一斉に 活動を開始することを意味する.この高度な同調性を制御 するメカニズムはいったいどのようなものなのカゝ，植物生 理学の研究においても関心が高いテーマの一つである.こ こ十数年ほどの間にその制御メカニズムの解明に大きな進 展がみられている力、その中心はこの成熟現象を制御する 転写因子が数多く同定されてきていることにある（表1). 本総説では成熟研究が最も盛んに行われているトマトにつ いて，最近の研究の進展を紹介する.