構造色シンポジウムと最近の構造色研究動向

摘要

昆虫や鳥の羽根が持つ眩いばかりの輝きはどのように生み出されるのだろうか。20世紀の初頭、レイリーやマイケルソンといった著名な科学者がその間題に取り組んだ。当時はまだナノ構造を直接観察する手段がなかったが、光学顕微鏡を用いた詳しい観察や理論的な解析が行われ、光の干渉 が発色の原因であると推測された。電子顕微鏡が開発されると、輝きを持つ生物には驚くほど緻密な周期構造が存在することが分かった。その構造の周期は光の波長程度であったため、鮮やかな色は干渉が引き起こす波長選択性によって説明され、物理機構としての構造色研究はいったん下火になった。しかし、1980年代後半、フォトニック結晶という新しい概念が見出されると、光のバンド構造やバンドギャップの形成機構に関して活発な研究が行われるようになる。それにあわせるかのように、構造色を持つ自然界の生物は、再び脚光を浴びはじめた。第1回構造色シンポジウムが行われた2000年は、ちょうどそのような時期である。