HART通信の進化と今後の動向

摘要

その後，1980年代後半にかけて，各社から通信機能を搭載した機器が開発·発売されたが，各社，独自の通信規格を採用したため，ユーザにとって使い勝手の良いものではなかった。そのため，ISAなどで，フィールドディジタル通信（フィールドバス）の統一規格仕様の開発が盛んに行われたが，仕様はできても実装技術の開発が伴わず，実現化に多くの時間を費やした。このため，1990年代中盤から主要ベンダの共同開発により，実装技術を伴ったフィールドバスの統一仕様の開発が行われ，現在のFOUNDATIONフィールドバスやProfibusが開発された。しかし，新たな配線の敷設を必要とするフィールドバスでは，現存のプラントへの採用には大幅なプラントの改装が必要なため，現存の4-20mAの電子式計装を変更することなく採用できる通信技術の開発が望まれていた。HART通信は，1987年Rosemountにより開発された通信技術を基に改良を加え，多くの計装機器べンダが採用できるようにしたものである。このHART通信を多くのベンダが採用できるように1993年HART協会（非営利団体）が設立され，その普及を開始した。HART機器の稼働実績は，2001年に全世界で1,000万台を達せし，2010年には，3200万台にまで普及した（図1）。図2に，全世界で稼働している通信方式別のシェアを示す。