浸炭材の表層組織とショットピーニングで発生する最大圧縮残留応力に関する研究

摘要

本研究では，硬さ分布, γ_R量および析出炭化物量を変化させた浸炭材を被処理材として，SP処理後の圧縮残留応力の最大値（|-σ_(Rmax)|）に及ぼす硬さと組織因子の影響を評価した．以下にその結果を記す．1）共析浸炭材の|-σ_(Rmax)|は,おおよそ被処理材の表層平均硬さで整理でき，投射粒子CCW（700HV）を用いたSP処理では被処理材硬さが低いほど，SUJ2（950HV）を用いたSP処理では被処理材硬さが高いほど|-σ_(Rmax)|は高くなる.この傾向は，被処理材の硬さと投射粒子の硬さから，投射粒子の塑性変形の有無を考慮した小川らの理論と一致する.2）SP処理によるγ_Rの変態量の増加は|-σ_(Rmax)|を低下させる可能性がある.これは加工誘起変態による浸炭層表面の硬化が投射粒子を塑性変形させているためと考えられる．3）硬質な炭化物の析出は|-σ_(Rmax)|を低下させる．これは析出炭化物が最表面の硬さを著しく高め，投射粒子の塑性変形を助長させているためと推測される．