建築学分野における戦後農村計画研究のオーバービュー、その通世代的継承と展開－’94春季学術研究会における議論の解説と解釈－

摘要

今にして見れば、建築学会農村計画委員会におけるアイデンティティー論の発現は、世間一般の閉塞ムードや転換期意識と独立したものではなく’40体制、’55年体制の超克といわれる潮流とその質的な面で別ものではなかったようである。 1992年に当時、翌年委員長になる地井昭夫氏は委員会をめぐる状況を’勤続疲労、組織疲労’と比喩した。1976年に建築計画部門から農村計画が分離独立してから四半世紀、世代交代論的に見てほぼ一世代に当る期間が経った。 その間の研究発表はそのカテゴリ一別にですら容易に一覧できない程の蓄積となっている。 にもかかわらず、農村計画の研究発表数の停滞、委員会小委員会メンバー屑の固定化傾向、若手研究者参入の低調すなわち研究者層の高年化、他分野との研究交流上の隔離感などが自覚されたものといえる。