相互依存からの決別

摘要

民主党への政権交代に伴う一番大きな変化は、政治家と官僚と企業との関係の一大変化であろう。本来、憲法の条文から素直に考えれば、日本経済の将来を形作る政策は、国民から直接選挙で選ばれた政治家が行い、官僚はあくまでも国会の場で決められた政策を実行する一種の執行機関、言葉を変えれば道具に過ぎない。政治家はそれぞれの思想·信条に従った政権公約（マニフェスト）に基づいて、選挙を勝ち抜き、選挙前に約束した政策を実行する。それに対して、官僚はあくまでも、政治的中立性に立って政治家が提示した政策に基づいて、具体的な行政事務を実行するだけである。ところが、1955年の保守合同以来54年にわたって自民党の単独支配が続くと、政権政党と官僚との間に密接な共謀関係が成立し、本来緊張関係を保たなければならない政策と行政との関係が渾然一体となってしまう。政治家のほうとしても、次期選挙のための地元周りによる票固めに時間を優先したいがために、経済事情や業界事情に精通した官僚に政策を任せきりとなる。一応、政治家の政策立案能力を向上させるために、政策担当秘書という制度が設けられており、筆者の友人も銀行から政策担当秘書に転職したものの、政策担当秘書とは名ばかりで、実態は地元選挙区の冠婚葬祭等の選挙対策に時間をとられ、政策形成のための勉強時間がほとんど取れない状況にある。