LA-ICP-MS分析法による菱刈鉱床合金石英脈の石英中の微量成分の特徴と鉱液の起源

摘要

本鉱床に胚胎する菱泉1脈では，少なくとも2回の金鉱化作用が起こり，それぞれ鉱化初期で非常に高い全濃度（8,980~30,300ppm）で硫化鉱物を多量に含む「銀黒パンド」を伴う強い鉱化作用があった．菱泉5脈にも，類似した脈構造がみられ，鉱物組合せの類似性から，菱泉1脈の2回目の鉱化作用との対応性が推定される．芳泉5脈では，少なくとも3回の鉱化作用が認められ，鉱化後期の初期にやや強い金鉱化作用が確認された．2.（1）石英に含まれる希土類元素含有量は，Au含有量に富む菱泉5脈の鉱化初期では比較的高く，Au含有量が比較的低い菱泉5脈の鉱化後期や芳泉5脈では低い値を示す傾向がある。 （2）本鉱脈の石英ではLi含有量に関してややAl含有量に富むことから，石英中のAlはSi~(4＋)<->Al~(3＋)＋Li~＋の置換反応での存在以外に石英粒間中の粘土鉱物又は非晶質物質として存在している可能性がある．Al含有量はAu含有量と正の相関関係を持つ傾向があり，石英中のAuの沈殿にはAlが関わっている可能性がある．石英脈中の希土類元素は石英粒間の合A物質または粒界の不純物中に存在していると推定される．3.高いAu，REE含有量を伴う菱泉5脈の鉱化初期の熱水は，天水起源の熱水が地下で母岩と十分交換反応を起こし，AuやREEなどの成分を多量に溶かし込んだと考えられ，REEは，鉱脈形成時に非晶質シリカの沈殿のときに高濃度Auと共に沈殿したと考えられる。