大学ラグビー選手の夏季合宿中の身体的，精神的疲労の出現とその関連について

摘要

我々は，大学ラグビー選手25名を対象に夏季合宿中の身体組成値，血液生化学値と心理テストの変化を調査し，それらの関連性を検討した．その結果，合宿期間中にBUN，GOT，GPT，LDH，CK，C4が有意に上昇（P<0．01），UA，IgG，IgMが有意に減少した（P<0．01，0．05，0．01）．また，POMSの緊張，疲労，総合評価のスコアの有意な上昇（P<0．05，0．01，0．01）と，活気スコアの減少が観察された（P<0．05）．一方，合宿前後のHb，Hct，Cr，BUN，GOT，CK，IgG，C3，C4の変化とPOMSの幾つかの指標のスコアの変化の間に有意な相関がみられた．すなわち，本結果は通常練習期の約3倍の6時間，約20日間実施された合宿中の激しい身体活動およびその繰り返しが，合宿後に体組織蛋白の異化，筋組織の損傷とこれに伴う抗炎症反応等をもたらし，身体的に著しい疲労を蓄積させた可能性を示唆した．また，同様に対象者に合宿後精神的疲労も蓄積させることを示唆した．以上のことから，身体的，精神的疲労の蓄積が著しい合宿後の体調管理には特に注意を要すると考えられた．また，身体的疲労の効率良い回復が精神的疲労の回復により効果的である可能性も示唆された．さらに，合宿中に毎日生じる身体的疲労をその都度回復して行くことが，身体的，精神的疲労の蓄積の予防，改善に重要となると考えられた．