胸椎後縦靱帯骨化症に対する後弯減弱を加えた後方除圧固定術が脊髄に及ぼす影響 有限要素モデルによる応力の検討

摘要

我々は胸椎後縦靱帯骨化症に対し2つのステツプに分けた脊髄全周除圧術を行い，良好な成績を得ている. 第1ステップでは骨化巣のレベルに合わせ広範に椎弓切除を行い，ィンストウルメンテーシヨンを使用し後弯減弱と固定術を行う，第2ステツプでは前方から後縦靱帯骨化（ossification of longitudinal ligament, OPLL)を削り脊髄前方除圧を行い脊髄全周除圧を完成させている.本研究ではこの第1ステップの効果をより明確にするため，手術を有限要素モデル（finite element model, FEM)にて再現し力学的な解析を行った.この手術のモデル化には人体有限要素モデルのTHUMSCTotal Human Model for Safety, THUMS~R)を使用し，これに脊髄，OPLL, 黄色靱帯骨化（ossification of yellow ligament, OLF)を追加し研究モデルとした.OPLLは第8/9胸椎レベルに作成した.OPLLを脊柱管における占拠率が0-70%となるように変化させ，その際に脊髄に生じる応力を後方除圧前および，後方除圧後モデルにて測定した.各占拠率における除圧前，除圧後の応力を比較すると，後方除圧後は応力が大幅に減少しており，70%の占拠率では応力が52.3%減少した.さらに第7胸椎から第11胸椎までで10度の後弯減弱を再現し，応力を分析した.その結果，脊髄に加わる応力は後弯減弱前後で比較すると，最大14.6%減少し，後弯減弱により脊髄は間接的に除圧されることが証明された.本研究により脊髄全周除圧術における後方椎弓切除，後弯減弱が脊髄の除圧に有用であることが力学的にも証明された.