早急な治療により視力改善が得られた癌関連網膜症(CAR)の1例

摘要

癌関連網膜症(cancer-associated retmopathy;CAR)は進行が早く高度の視機能障害に陥るが,治療困難である.急速な視力低下と視野狭窄の発症から肺癌を発見し,早期治療により視力回復を得たCARの1例を報告する.70歳男性, 2005年6月急峻な視力低下,視野狭窄で受診した.同年5月の矯正視力は両眼1.2であったが, 6月の初診時は右指数弁,左0.7に低下していた.視野は高度に狭窄し夜盲を自覚,網膜電図が平坦化し網膜色素変性様所見を呈していたが,網膜に色素沈着はなく網膜血管の狭細化があるものの明らかな変性はなかった.既往歴として突発性難聴があった.経過からCARを疑い胸部の腫瘍検索にて,肺に直径約1.2cmの小細胞癌が発見された.初診後1週で視力は両眼手動弁に低下したため,緊急入院し,肺癌の化学·放射線療法とともにステロイドパルス療法を施行した.矯正視力は右0.4,左0.3に改善し,肺腫瘍も画像上消失した.