たこつぼ型心筋症を発症した多発性骨髄腫

摘要

症例は67歳女性。2006年に多発性骨髄腫（IgA-a：， CSIIIA)と診断され，MP療法を受けるも骨病変の進行を認め，サルベージ治療（VAD療法）導入目的で2007年6月に入院した。治療開始後数日で，39degC台の発熱， 前胸部痛，心電図変化が出現し，心臓超音波検査にて心尖部を中心に壁運動の低下を認めた。急性心筋梗塞を疑い緊急冠動脈造影検査が行われたが，冠動脈に有意狭窄を認めなかった。心臓超音波検査所見よりたこつぼ型心筋症と診断した。利尿剤および硝酸剤を使用したが，前胸部痛，心電図変化は改善されず，播種性血管内凝固症候群も併発し，化学療法開始後9日目に永眠された。たこつぼ型心筋症は冠動脈の狭窄や閉塞を認めない原因不明の一過性心筋運動障害であり，強い身体的·精神的なス卜レスが原因の一つとされている。血液疾患に関連した報告は少ないが，重篤な副作用として留意する必要がある。