機能ゲノム科学が変える臨床医学

摘要

ヒトゲノム計画によりヒトゲノム塩基配列の全容が明らかになりつつある．ゲノムの構造を解析する段階から，ゲノムに含まれる遺伝子機能を解析する段階に移行しはじめた現在，生命現象を，正常，病態を問わず精巧に制御された遺伝子発現の総体としてとらえる機能ゲノム科学の立場は，医学?生物学におけるひとつのパラダイムシフトといえる．こうした機能ゲノム解析の手法には，バイオインフォマテイクスによる遺伝子機能予測や,ゲノム多型解析，遺伝子発現情報解析といった方法がある．機能ゲノム解析がもたらす疾患に関する知見は，病態や病期の診断，治療方針の選批　 あらたな治療法の開発，疾患に対する遺伝学的なリスク評価などの足がかりとなる．各個人の遺伝学的背景（遺伝子型）を考慮し，個別至道化したテーラーメイド医療はこれからの臨床医学がめぎす方向性のひとつである．