漢方鎮咳薬の薬効特性とその発現機序-Polypharmacyとしての分子作用機序

摘要

咳は異物を噴出するための生体防御反応であり，多成分からなる複合反射である．現在使用されているコデインなどの中枢性鎮咳薬は，生体防御反応としての咳まで抑制することもあれば，咳の種類によってはまったく無効なこともある．漢方薬,とくに麦門冬湯は末梢性·多成分系鎮咳薬として,中枢性鎮咳薬では無効な難治性咳に著効を示す．標的部位は求心性神経受容部位,気道平灘軌好中乳粘液分泌細胞，肺胞II型細胞であり,ステロイド類似（および非類似）の多岐にわたる作用を有する．すなわち，麦門冬湯はタキキニン受容体（NKlおよびNK_2レセプター）持続乳Kヰチャネルオープチー，β受容体遺伝子発現促進薬粘液遺伝子発現抑制薬としての性質をもち，咳と痰の原因となっている気道病変を直接修復し,総合的に気道クリアランスを改善する．作用機序として，遺伝子の転写調節を介する細胞機能調節物質（BRM）としての働きが重要であるといえよう．