遺伝子導入による造血幹細胞の増幅

摘要

造血幹細胞は自己複製能とすべての血球系列への分化能をあわせもつ細胞であり,個体の造血系を一生涯支えていく源である.その移植は再生不良性貧血や悪性腫瘍の根治療法として定着してきたが,骨髄移植や末梢血幹細胞移植の場合は組織適合ドナー不足の問題が,新しい幹細胞ソースとして期待される齏帯血の場合は得られる細胞数の不足の問題がある.そこで,造血幸手細胞の人為的増幅が大きな研究主題となっているが.これまで論じられてきた幸手細胞増幅技術の開発は増殖因子などによる体外増幅とほぼ同義であった.一方,最近の遺伝子治療技術の実用化とともに,外来遺伝子を導入した特定の幹細胞集団を選択的に増やそうというアイデアが検討されるようになった.本稿ではこの"遺伝子導入による造血幹細胞の体内増幅"という新しい概念とその具体的アプローチについて紹介する.