前立腺癌の遺伝子治療 臨床研究における最近の動向

摘要

前立腺癌は,病巣へのアクセスが容易であること,腫瘍マーカーであるprostate specificantigen(PSA)を用いることで治療効果の判定が精度よく行える点より.遺伝子治療の臨床研究を実践するのにもっとも適したターゲットであると考えられる.前立腺癌に対するherpes simplexvirus thymidine kinase(HSV-tk)遺伝子とganciclovir(GCV)を用いた"自殺遺伝子治療"のアメリカにおける第卜相臨床試験において,その安全性臨床的有効性全身免疫反応の存在が確認された.著者らも同様の手法を用いて,わが国初の前立腺癌遺伝子治療臨床試験を2001年3月に実施している.ベクターの局所投与であるinsitu genetherapyによって誘導される全身の免疫賦活作用の存在は,全身投与可能かつ安全なべクターがいまだに臨床上使用できない現状においては,転移を有する進行癌が将来治療対象となりうることを示唆している.