細胞周期進行におけるユビキチン·プロテアソーム系蛋白質分解の役割

摘要

細胞周期の規則正しい進行のためには，それぞれのステップを進行させる因子が秩序正しく合成·活性化されることが必須である．活性化された因子がその役割を終えるときには分解により迅速に不活性化されることが必要であり，この分解がつぎのステップへ進むためのシグナルとなる例も多いことが明らかになってきている．細胞周期の進行制御機構を解析する研究から，特定の因子が特定の時期に間違いなく壊されるための機構として，ユビキチン·プロテアソーム系というシステムが広く利用されることが明らかにされてきた.これは，エビキチンという低分子蛋白質によって分解される標的因子の標識と，標識された因子を認識し分解するプロテアソームという巨大プロテアーゼ複合体による蛋白質分解であり，細胞周期調節因子のみならず細胞内で広く利用されていることが明らかにされつつある．本稿ではユビキチン·プロテアソーム系による蛋白質分解の細胞周期進行の役割について解説し，その重要性について議論する．