植物ユピキチン／プロテアソーム系の細胞周期における新しい役割

摘要

低分子タンバク質ユビキチン（Ub）に共有結合されたタンバク質は，26Sプロテアソームによって分解される．この一連の経路をUb／プロテアソーム系と呼ぶ．Ub／プロテアソーム系は酵母からヒトに至るまで保存されており，細胞周期，シグナル伝達，免疫応答，アポトーシスなどを制御する多くのタンバク質がこの系を介して分解される．本稿では，Ub／プロテアソーム系と細胞周期制御との関わりについて，まだ報告の少ない植物細胞で近年明らかになったことを中心に述べる．プロテアソームが発見されてから約15年が経過した．この間の研究の進展は目覚ましく，今やタンパク質分解系を語る上でプロテアソームなしでは進まない．しかし，これまでの研究は動物や酵母を中心に行なわれており，植物プロテアソームに関してはそれらを後追いする研究が主であった．最近，植物のユビキチン（Ub）／プロテアソーム系が植物細胞独自の機能に関与していることを示唆する研究が，細胞周期制御の点から進んできた．植物には，動物や酵母とは異なり，植物特異的なチュープリンの構造体である前期前微小管束，隔膜形成体および表層微小管が存在する．これは植物独自の細胞周期制御システムが存在することを示唆している．本稿では，これらチューブリンの構造体を中心に，最近明らかになった植物の細胞周期におけるUb／プロテアソーム系の新しい役割について概観する．