生殖補助医療の将来

摘要

生殖補助医療においては,過剰排卵処理,人工授精.体外受精·胚移植,さらに精子や胚の凍結保存など,経済家畜において実用化の段階に入っている配偶子ならびに胚の操作技術を適用してきた.これら生殖補助技術の多くはヒト臨床に供試される前に各種動物で産仔も得られて,その安全性が予見されるものであった.しかし,遺伝子工学やプロテオーム研究などの先端技術から生命科学領域における生斜こ対する理解の精度は高まるにつれ.新しい領域が開けていくであろう.DNAのメチル化やゲノムインプリントに代表される遺伝子の発現制御機構,蛋白質による転写制御などによる生命の活動機序が解析できるようになり,哺乳動物の初期発生に及ぼす影響が解明され,あらたな生殖医療の領域を開くとともに.正確に安全性や危険性を予見ずることができるようになる.つまりリスクを取っても産児を得るのか.安全性を取って治療を繰り返すのか,患者自身と医師,そして生殖医療をサポートするすべての人間が自己の責任を問われる時代がくるであろう.このように生殖補助医療はあらたな局面に入るとともに,その様術は未知の領域を展開していく巻のとなり,生殖補助医療で理解された情報が普遍化され,あらたに他の医療分野へ大きく情報発信でき,医療全体のなかでの重要性は非常に高まると考えられる.